2018年にIR整備法、通称「カジノ法案」が成立したことにより、いよいよ日本でもカジノリゾートができる! と話題になりま…
「大阪にカジノができる!」ということをご存知ですか?
大阪府・大阪市が2022年4月に申請を行ったIR区域整備計画が国交省の審査委員会より認定されたことにより、日本国内では初となるIR施設が開業することになりました!
IRの施設にはカジノも含まれているため、順調に計画が進めば2029年以降、日本でもカジノが楽しめるようになります。
しかし、大阪IRに関するニュースも多くなっている中、「結局今はどんな状況なの?」「いつからカジノで遊べるようになるの?」と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?
そこで、この記事では大阪のIR(統合型リゾート)について解説します。カジノができる場所、今後のスケジュール、IRによるメリットやデメリットなど、最新情報についてまとめています。
この記事のまとめ
- 大阪IR・カジノは2025年に開催される大阪万博の予定地でもある「夢洲」に建設予定
- 2023年4月に整備計画が認定された
- 大阪IR・カジノが開業されるのは2029年~2030年頃になる
この記事はおよそ 11分 で読むことができます。時間がない方は目次を活用しましょう
IRとは「統合型リゾート」のこと
「IR = カジノ」と考えている方も少なくないかもしれませんが、IRというのは「Integrated Resort」、つまり統合型リゾートのことを指します。
国際会議施設や展示場などMICEと呼ばれる施設をはじめ、カジノ施設、ホテル、映画館、劇場、ショッピングモール、レストラン、商業施設などが一体となった複合型の観光施設のことをIRと言います。
ビジネスでもプライベートでも、ファミリー層でも富裕層でも、どんな観光客でも楽しめる集客施設と言えるでしょう。
ちなみに、日本国内の規定では、カジノ施設の総面積は全体の3%以内に抑える必要があります。そのためカジノ施設より遥かに他の施設の方が大きいと言えます。
ただ、一般的なIRではカジノの売り上げが全体の収益の8割を占めると言われているため、カジノがIRの中核的な存在であることは間違いありません。
2023年4月に「大阪IR」が区域整備計画を認定
IRを開業するためには、誘致を考えている自治体が政府に「特定複合観光施設(IR)区域整備計画」を提出し、計画を政府に認定してもらう必要があります。
2022年に区域整備計画を提出していた大阪府・大阪市ですが、2023年4月に整備計画が政府から認定を受けました!
そのため、このまま整備計画が達成された場合、日本初のカジノは大阪にできるということになります。
現在は行政手続き・調査・準備工事の着手を行っている段階で、大阪府・市の整備計画によれば開業は2029年の秋とされていますが、1年〜3年程度後ろ倒しになる可能性もあります。
大阪IR・カジノができる場所は「夢洲」
カジノを含む大阪IRができる場所は、大阪市此花区にあるおよそ390ha(甲子園球場100個分)の人工島・夢洲(ゆめしま)です。
夢洲は元々ゴミ処理場としての利用を目的に作られた埋め立て地ですが、今までに開発計画やオリンピック誘致などに失敗し、「大阪の負の遺産」と呼ばれていた場所としても知られています。
しかし、2025年の大阪万博の開催地に選定され、また大阪IRの候補地にもなっている今では、大きな経済効果が期待されている土地と言えるでしょう。大阪の新たなランドマークを目指し、着々と工事が行われる予定となっています。
建設予定地の「夢洲」への行き方
夢洲と本土とはトンネルや橋がかかっているだけなので、現在のところバスや車で向かう以外に上陸する方法はありません。
しかし、2025年に大阪万博が開催されることを受け、すでに大阪メトロが中央線・コスモスクエア駅から夢洲(仮)駅に向けて路線を延伸することを発表しています。
また、京阪電鉄は中之島線を延伸、JR西日本は桜島線を延伸、近鉄は奈良線とけいはんな線の接続という形で夢洲(仮)駅に路線を通すことを検討しており、飛躍的にアクセスが改善することが見込まれています。
夢洲(仮)駅は2024年度が開業目標となっており、複数の鉄道会社が路線を延伸することで万博・IRへの来場者数が向上すると言えるでしょう。
大阪のカジノはいつできる?開業は2029年の秋以降
2022年に大阪府・大阪市が申請した整備計画では、このようなスケジュールで運用されるという想定がありました。
スケジュール | 計画内容 |
---|---|
2022年秋 | 区域整備計画の認定〜行政手続き |
2023年 | 工事の発注、着手 |
2029年夏 | 工事完了 |
2029年秋 | IR施設の開業 |
そのため、当初の開業予定は「2029年」となります。
しかし、政府の認定審査が長期化し、2023年4月にようやく認定が降りたため、工程に約半年の遅れが生じることになりました。
整備計画では「新型コロナウイルス感染症の収束状況、IR事業の税制上の取扱い及びカジノ管理規制の整備状況、夢洲特有の地盤性状への対応状況、工事環境等によっては、IR事業の工程は1~3年程度後ろ倒しとなる可能性がある」と記載されているため、開業予定は2029年〜2030年頃と言えるでしょう。
大阪IRの運営事業者であるMGMリゾーツは決算会見において開業時期を「2030年上半期」という見通しを示しているため、その時期になるのが最も可能性が高いと言えます。
2023年9月15日追記
大阪府と大阪IRは9月8日、観光庁に区域整備計画の変更と実施協定の認可の申請を実施した。実施協定では国の認定が想定より遅かったことを理由に大阪IRの開業時期を2030年秋に延期。加えて液状化や土壌汚染、地盤沈下などの夢洲特有の土壌対策や工事の環境などにより、1年から2年後ろ倒しとなる可能性があるとしている。
引用元: 大阪IR、開業を30年秋に延期、初期投資額増
大阪府と大阪IRは、2023年9月8日に観光庁に対して、大阪の統合型リゾート(IR)プロジェクトに関する計画変更と実施協定の認可を申請しました。
国の認定が予想よりも遅れたことがあり、そのため大阪IRの開業予定が2029年秋から2030年秋に延期されることとなりました。
また、夢洲地域での特有の課題、例えば土壌の液状化、土壌汚染、地盤沈下などにより、さらに開業が1年から2年遅れる可能性も検討されています。
大阪IR・カジノの詳細情報
「大阪のIRって、実際カジノ以外何があるの?」という疑問を持たれる方も多いかもしれません。実はIRの施設内にはカジノ以外にも多くの魅力的な施設があり、カジノには興味がないという方でも全く問題なく楽しめる複合型のリゾートなんです!
そこで、続いての項目では大阪IRのコンセプトやIRの中にある施設、カジノにはどんなゲームがあるのか、などについて詳しく解説します。
大阪IRのコンセプト
大阪IRを手掛けるMGMリゾーツ・オリックスは、大阪IRのコンセプトとして「結びの水都」を掲げています。
大阪は、市内の至る部分に川が流れており、水運に支えられて発達したことから水都という別名があります。
IRは多くの施設が一つに集まっていることから、あらゆるものを結んでいる起点としての役割、そして大阪の伝統や文化を継承していくという思いが込められています。
大阪・関西のポテンシャルを最大限に活かしつつ、大阪と関西、日本、世界を結び、新たなエンターテイメントを実現するという意図が込められたコンセプトであると言えます。
大阪IRに作られる施設
大阪IRには大きく分けて4つのゾーンに分かれています。「関西ゲートウェイゾーン」「イノベーションゾーン」「ウォーターフロントゾーン」「結びの庭ゾーン」と呼ばれており、それぞれのゾーンで異なる施設が配置される予定となっています。
- 「関西ゲートウェイゾーン」…駅やバスターミナルなどが設置される玄関口。MGM大阪などのホテルや飲食施設、映画館などが配置される。カジノ施設もこのゾーンに配置
- 「イノベーションゾーン」…イノベーションの創出を促す場所。国際会議施設、展示場などのMICE施設が配置される。
- 「ウォーターフロントゾーン」…海の近くにあり、パブリックスペースとして使われる場所。関西アート&カルチャーミュージアム、フェリーターミナルなどが配置される。
- 「結びの庭ゾーン」…3つのゾーンに囲まれた、大規模なオープンスペース。小規模な商業店舗などが配置される。
このように、大阪IRはカジノだけでなく非常に幅広い層に向けた施設になっていることが分かります。
ちなみに、大阪IRの試算によると、予定来場者数2,000万人のうち、カジノを利用する層は1,000万人となっており、およそ半分ほどの利用者はカジノを使わないと考えられています。
そのため、ファミリー層などカジノを利用しない来場者にとっても使いやすいリゾート地と言えるでしょう。
大阪のカジノ内に入る設備・入場料
日本国内の基準では、カジノ施設の面積はIR全体の3%以下に抑える必要があると定められています。
大阪IRの床面積約770,000㎡のうち、カジノ施設(ゲーミング区域)の面積はおよそ23,000㎡です。施設内では、バカラ・ルーレット・ブラックジャックといったテーブルゲームが470台、ビデオスロットなどの電子ゲームがなんと6,400台も設置されるという予定になっています。
これは世界の名だたるカジノ施設にも引けを取らない台数となっており、ベット額に応じてカジノをお得に楽しめる「ロイヤリティプログラム」なども用意される予定です。IR大手のMGMリゾーツだからこそ実現できるカジノと言えるでしょう。
なお、日本人・在日外国人がカジノを利用する場合、1日(24時間)あたり6,000円の入場料が必要となります。
また、入場可能な日数も週3日・月10日までと定められており、入場時にはマイナンバーカードやパスポートなどを使った本人確認が必要です。訪日外国人については入場料は無料となっています。
大阪IR・カジノの運営事業者「米MGMリゾーツ・オリックス」
大阪IRを運営する会社は「大阪IR株式会社」という名前ですが、この会社の中核株主となっている企業は「MGMリゾーツ・インターナショナル」の日本法人、そしてオリックス株式会社です。
ラスベガスに拠点を置くMGMリゾーツは、IR事業では非常に名の通った会社です。
ラスベガスにあるベラージオ・ミラージュ・マンダレーベイなど名だたるカジノリゾートを展開する他、マカオやドバイなどに10拠点・30件近くのリゾートを運営しています。
年間売り上げはなんと1兆円以上と、IR分野では非常に高い実績を誇る企業と言えるでしょう。
また、オリックスは関西で知らない人はいない超有名企業です。不動産、銀行、プロ野球チーム(オリックス・バファローズ)の運営など幅広いジャンルで事業を手掛けており、東証プライムやニューヨーク証券取引所にも上場しています。
IR事業に特化した企業と大阪をよく知る企業がタッグを組んだコンソーシアム・大阪IR株式会社は、大変信頼性の高い企業ということができます。
大阪IR・カジノで期待される経済効果
大阪IRはもともと、「IRの収益による地域経済への波及」や「雇用創出による経済発展」によって、大阪の一層の発展に貢献するために作られた施設です。
もちろん日本人にとっても本場のカジノを気軽に遊べる機会が増えたことはメリットですが、それ以上に様々な施設が一体となった統合型リゾートによって、観光客の集客力を増加させることがねらいとなっています。
続いて、大阪IRで期待される経済効果について解説します。
年間5,200億円の売上を見込んでいる
大阪IRでは以下のような事業効果を見込んでいます。
経済効果 | 見込み内容 |
---|---|
年間売上 | 5,200億円 |
年間来場者数 | 2,000万人(国内1,400万人 / 国外600万人) |
雇用者数 | 15,000人 |
大阪府・大阪市への年間納付金 | 1,060億円(入場料を含む) |
年間売り上げ5,200億円のうち、カジノ事業の収益は4,200億円と見積もられています。これは売上のおよそ8割にあたり、ゲーミング事業がIRの要であることが分かります。
大阪府・大阪市への納付金は1年当たり1,060億円を見込んでおり、これは観光や教育制度の改善など様々な事業で利用される方針です。
ちなみに、ラスベガスのカジノ事業の収益は全体の半分以下となっていますが、シンガポールやマカオでは全体の8割以上がカジノの収益となっています。
そのため、シンガポールやマカオのビジネスモデルに近い形と言えるでしょう。
雇用機会・雇用者の増加
IRでは、カジノ施設はもちろんのこと、国際会議場や展示場などのMICE施設、ショッピングモール、飲食施設、ホテルなど非常に多くの施設が利用できます。その分働く従業員の数も非常に多く、試算では15,000名の雇用者の創出が見込まれています。
さらに近畿圏全体では9万名を超える雇用創出が想定され、その分地域経済を活性化できる起爆剤になると言えるでしょう。
国内外からの集客力強化
日本がIRを推し進める理由はもう一つあり、それが「観光立国・日本」としての挑戦です。
国際会議場や展示場など、ビジネスイベントが行われる施設のことを「MICE施設」と言います。
MICE施設は団体での参加が多くなるので、MICEを含めた統合型リゾートは普段の旅行より一度に使われる金額が大幅に上がります。
そのため、MICE施設を含む統合型リゾート=IRは現在多くの国や地域が誘致を目指している施設です。
日本では、そのようなIRが現状1個もありません。そのため、世界に通用するようなIRを作り、国内外からの集客力を強化することによって、政府目標である「2030年訪日外国人数6,000万人/旅行消費額15兆円」の達成の一助になることを見込んでいます。
大阪IR・カジノで懸念されている課題点
ここまで大阪IRのメリットや経済効果などについて解説してきましたが、その一方でこのようなデメリットや課題も残されています。
- ギャンブル依存症の増加
- 治安の悪化
- 土壌汚染・地盤沈下の対策
- マネーロンダリング対策
最後の項目として、これらのデメリットについての解説と、それに対して大阪IRがどのような対策を行っているかについて説明します。
ギャンブル依存症の増加
パチンコ・パチスロ・宝くじ・競馬・競輪・競艇など、気軽にギャンブルを楽しめる日本において、ギャンブル依存症はかなり深刻な課題となっています。
厚労省による2021年の調査では、ギャンブル依存症が疑われる成人の割合は2%程度という結果が出ています。
大阪IRの試算によればのべ1,000万人の観光客がカジノを利用することを見込んでいるため、ギャンブル依存症の増加が懸念されています。
大阪IRではギャンブル依存症の対策として、日本人がカジノを利用する際は6,000円の入場料がかかること、またマイナンバーカードなどで本人確認を行い、週3回・月10回の入場制限がかかることなどを定めました。
また、IRの収益の一部(初期投資75億円、年間33億円を想定)はギャンブル依存症対策に充てられることが予定されています。ギャンブル依存症を未然に防ぎ、カジノにのめり込ませないような取り組みが求められると言えます。
治安の悪化
諸外国ではマフィアやギャングなどの犯罪組織がカジノ施設を取り仕切っていることが多く、また日本でも不正組織が裏カジノなどを運営していることが多いため、カジノ施設に犯罪組織が入り込むことによって治安が悪化するのでは?という問題も懸念されています。
そもそもIRの整備計画では要求基準(守らなければいけない基準)として「IR事業者の役員及び株主又は出資者についての反社会的勢力の排除」を定めており、常に暴力団などの介入ができないような仕組みが作られています。
また、夢洲内に警察署を設置し防犯環境の整備やパトロールを強化することにより、事件・事故の未然防止及び検挙活動を推進すると整備計画で定めています。
なお、シンガポールやマカオなどの有名なリゾート地では、IRが作られた前と後で特に犯罪件数が変わったという例はなく、治安悪化は限定的であると言えそうです。
土壌汚染・地盤沈下の対策
夢洲はゴミ処分場として作られた埋立地であるため、土壌汚染や地盤沈下といった公害に今も悩まされている土地となっています。そのため、万博・IRが成功するためには、まずこれらの対策を行う必要があります。
現在大阪市では、土壌汚染・液状化対策、地中埋没物の撤去費用として、総額790億円を負担することを発表しています。
もちろんこれは公費、つまり大阪市民の税金によって賄われているため、一部市民からは反発の声が上がっています。
さらに地盤沈下については高い技術が必要と言われているため、今後どれだけ費用が膨らむかはいまだに分かっていません。
2023年9月13日追記
大阪府と大阪市が夢洲で開業を目指すIR=カジノを含む統合型リゾートをめぐっては、土壌汚染や液状化問題などに対して市が788億円を上限に対策費用を負担することが決まっています。さらに9月5日には、開業後10年をめどに展示場やホテルを増築する場合にも市が土壌汚染対策費用などを負担することが決まりましたが、具体的な金額は示されていませんでした。
府市のIR推進局によりますと、市の追加の負担額については対象となる土地を20万平方メートルと想定し、約257億円に上ると試算しているということです。
引用元: 『大阪IR』土壌汚染対策などに大阪市が追加で257億円負担の「試算」
2023年9月8日に発表された情報によれば、大阪府と大阪市が計画する統合型リゾート(IR)プロジェクトに関連し、大阪市の土壌汚染と液状化の対策費用が最大257億円増加するという試算があります。
これは、IRプロジェクトに関連する土地面積を想定して計算されたもので、具体的な計画やニーズはまだ存在しないとして、市の負担金はこの試算額からこれ以上は上乗せされないとされています。
マネーロンダリング対策
ランドカジノ(店舗型カジノ)において最も多い犯罪は「マネーロンダリング」です。不正組織が詐欺など違法行為で稼いだお金をカジノに支払い、チップを受け取ってからそのまま引き出すことによって、金の所在を不明にするという犯罪となっています。
マネーロンダリングについては、「アンチマネーロンダリング法」という国際法によって厳しく処分することが求められていますが、各国によって基準が異なるため、日本においてもカジノが出来る前に国際基準に合わせた対応を設定することが求められています。
例えば高額の取引では顔写真と名前を確認する、反社会的勢力の場合は入場を拒否するなど、不正に対しては厳格に処分するのが求められると言えるでしょう。
まとめ
2023年に大阪府・大阪市の整備計画が国から認められたことにより、日本初のカジノ施設は大阪にできる可能性が高いことが明らかになりました!
「IR」とはカジノ・ホテル・宿泊施設・ショッピングモール・映画館・展示施設・会議場などが集まってできる統合型リゾートのことで、カジノに興味ある方はもちろんファミリー層など幅広い観光客に向けた施設となっています。
計画では2029年完成予定でしたが、認定時期の遅れなどから「2029年〜2030年」頃に完成するという予測が立てられています。
大阪IRでは観光客の増加・雇用創出などによって地域経済が活性化することが見込まれる一方、ギャンブル依存症や治安の悪化といった懸念事項を抱えており、課題を一つずつ解決していくことが求められると言えるでしょう。
無事に問題を解決できれば、海外よりも気軽にカジノを楽しむことができるようになります。